韓国仮想通貨取引所ビッサム、新規口座開設一時停止の真相

韓国の仮想通貨取引所ビッサム（Bithumb）が予告通り、8月1日以降、新規口座の開設を停止した。

ビッサムはあくまで一時的な決定で、「近日中に新規登録をまた受け付けます！」とやる気満々だが、現時点では一筋縄ではいかない空気が漂っている。既存ユーザーは小まめに最新情報をチェックすべし。

新規口座開設一時停止の真相

ビッサムは7月末、新規口座開設の一時停止をブログで発表していたので、ある程度心の準備をしていたユーザーも多いだろう。

ビッサムは、入金・出金サービス向上に向けて事業を見直す必要性を一時停止の理由に挙げているが、実は提携先の銀行と契約更新でトラブったのが真相らしい。Business Koreaは以下のように報じた。

Bithumb, one of South Korea’s four biggest cryptocurrency exchanges, will stop issuing new virtual accounts from August as it has failed to renew a contract with NH Nonghyup Bank.
韓国4大仮想通貨取引所のひとつビッサムが、8月以降新規口座の開設を停止する。NH農協銀行との契約を更新できなかったためだ。

同メディアの報道によると、NH農協銀行はビッサムのデータ処理システムに欠陥があり、それが今年6月に189 億ウォンの損害をだしたハッキング事件につながったとみている。

“We have decided not to renew the contract because Bithumb still has problems in protecting consumers and information and preventing money laundering（Business Korea）.”
「ビッサムには依然として消費者と情報の保護とマネーロンダリングの防止に問題があるため、契約を更新しないことに決めた（ビジネス・コリアより）」

既存口座の入出金サービスも停止？の恐怖

NH農協銀行のコメントはビッサムの主張と180度食い違う。

“We have a consensus with Nonghyup Bank on renewal of the contract. We are planning to iron out our different views on some legal expressions and start issuing virtual accounts soon. （Business Korea）”
「両社は契約更新について合意している。一部の法的表現に関する見解の差を埋め、近日中に新規口座開設を再開できるよう努力している（ビジネス・コリアより）」

しかしNH農協銀行は頑固一徹！といった態度を貫いているため、「今後既存口座経由の入手金も完全にブロックされるのでは？」と一部の専門家は懸念している。

そうなったらそうなったで、ビッサムには“ハイブ・アカウント（hive account）”というコレクション・アカウントを通して取引サイトを運営するという手が残されているが、投資家にとってはちょっと面倒くさいことになるだろう。

BTCなどの取扱い復活

恐らくビッサムは現在必死で交渉を続けられいるか、新たな提携先を物色中なのだろうが、少なくとも8月3日現在、既存のユーザーは今まで通り、入金も出金もできる。しかし前述したように、NH農協銀行が既存サービスもブロックする可能性は否めないので、随時最新情報に目を光らせておくように！

新規口座開設停止のニュースを受け、24時間の取引は数日間で40%以上減少。8月3日、コインマーケットのデータでは3.5億ドルから2.0億ドルに落ちこんだ（コインデスクより）。

ハッキングに続き、銀行に契約を打ち切られるとは、まさに踏んだり蹴ったりという感じだが、ポジティブなニュースもある。コインデスクの報道によると、セキュリティチェックと改善対策が無事完了し、ビットコイン（BTC）やイーサリアム（ETH）、リップル（XRP）を含む10種類の仮想通貨による入出金サービスが再開したのだ。

ビッサムが完全な鎖国状態におちいるかどうかは、韓国政府の規制動向次第だろう。大韓民国金融委員会が7月に仮想通貨の規制に関する法案を、可能な限り迅速に通すよう、政府に呼びかけている。

ビッサムとは？

ソウルを拠点とするBTCKorea.comが運営する仮想通貨取引所。サイトが若干怪しい日本語対応という点に好感がもてる。韓国一安い手数料・高セキュリティー（ハッキングされたが）・リアルタイム取引を売りにしている。

8月3日のコインマーケット・キャップの「仮想通貨取引量ランキング」では、世界10位。

NH農協銀行とは？

ビッサムとの契約更新を拒否ったNH農協銀行は、その名の通り韓国の「農協」である。1961年の設立以来、国産の農作物を販売するかたわら、金融業務や保険業務も行っている。

5月にはカンボジアのマイクロ信用機関の買収計画も報じられていたので、「農協」という響きから浮かぶのんびりしたイメージとはほど遠く、金融業務拡大にかなり積極的とみた。